研究概要 |
『揮発性吸入麻酔薬が肝細胞の糖代謝に及ぼす影響のメカニズムは,低酸素曝露によるメカニズムと同一であり低酸素と作用点を共有する』という作業仮説を証明するため,以下の実験を行った. コラゲナーゼ灌流法により分離したラット肝細胞を初代培養した後,培地をHanks液に置換し,専用チャンバーに設置した.37℃にて種々の濃度の酸素,揮発性吸入麻酔薬とともにインキュベーションした.酸素と吸入麻酔薬の濃度はmultiple gas analyzerを用いて調節した. 正確な酸素および吸入麻酔薬の濃度と肝細胞外への乳酸・グルコース放出,細胞内グリコーゲン量に関する濃度-反応曲線を作成するため,リアルタイムにこれらの反応を検出できる実験装置の構築を試みた.当初計画したマイクロダイアリシスバイオセンサーシステムを用いる方法は暴露時間の長い本研究に適していないことが判明したため,設定時間毎(分単位)にHanks液中の乳酸とグルコースを透析プローブを用いてサンプリングする方法に変更した.この方法ではマイクロフラクションコレクタ(14年度に設備備品にて購入)によりサンプリングを行い,透析プローブを用いて検体を定時的に回収する.Hanks液中の揮発性吸入麻酔薬濃度はガスクロマトグラフィーを用いて測定した. この実験系を用いて,1.酸素濃度と肝細胞外への乳酸・グルコース放出,細胞内グリコーゲン量に関する濃度-反応曲線,2.揮発性吸入麻酔薬の濃度と肝細胞外への乳酸・グルコース放出,細胞内グリコーゲン量に関する濃度-反応曲線を作成した.さらに,種々の酸素濃度におかれた肝細胞に一定濃度の揮発性吸入麻酔薬を曝露し酸素濃度-反応曲線の変化をプロットした.その結果から,酵素反応論的に低酸素暴露と揮発性吸入麻酔薬暴露が共通の作用点を有する可能性について検討を加えているが,現在のところ結論を導き出すまでには至っていない.
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