研究概要 |
敗血症では、微小循環障害により腸管粘膜は虚血に陥り易く、続発する腸管壁防御機構の破綻はbacterial translocationを惹起するため、腸管粘膜障害の予防は敗血症治療のひとつのゴールとなる。今回、硬膜外麻酔が「敗血症における腸管壁防御機構の破綻を軽減する」との仮説をたて、ウサギ内毒素血症モデルにおいて内毒素惹起性腸管粘膜の機能的組織学的障害におよぼす硬膜外麻酔の保護効果を検討した。ウサギに胸部硬膜外カテーテルを留置し、無作為にリドカイン群と生理食塩水群にわけて硬膜外持続投与を開始した。その後内毒素持続静注(LPS : 15mcg/kg/hr)を行い、血行動態ならびに腸管粘膜内pH(pHi)、蛍光色素標識デキストラン(FD4)法により腸管壁透過性を経時的に評価した。また血管内皮傷害マーカーであるトロンボモジュリン(TM)濃度を経時的に測定した。実験の最後に採取した回腸切片標本を用いて組織傷害度をスコアリングした。結果は、LPS投与4時間後の動脈血pHは両群間に差はなく、平均動脈圧がリドカイン群で低いが門脈血流は両群とも保たれた。一方、pHiは、リドカイン群で平均7.32と生食群の平均7.20に比べ有意に高かった。FD4濃度はリドカイン群で有意に低かった(3.26±0.47 vs 4.13±,0.98mg/mg-protein, P<0.05)。TM濃度は両群ともLPS投与後上昇したが、両群間に差はなかった(208±58 to 1578±1424 vs. 223±23 to 1342±822,生食群vs.リドカイン群P>0.05)。組織の傷害は生食群で有意に高度であった。結論として、硬膜外麻酔は、内毒素による血管内皮傷害を修飾することなく、内毒素惹起性腸管粘膜の機能的組織学的障害を軽減する
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