研究概要 |
平成15年度は正常妊婦(20例)末梢血よりFicoll-gradient法を用いて単核球を分離、さらに細胞接着性の相違を利用して血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cells,EPC)の純化を行った。光学顕微鏡による形態学的観察では、得られた細胞は培養当初クラスターを形成、引き続いてクラスター周囲に紡錘形の細胞が増殖した。純化した細胞を4 chamber slidesに培養し、免疫細胞染色によるLDL uptake,UEA-1(lectin)染色を施行、二重染色された細胞を血管内皮前駆細胞とした。さらに細胞の性格を確認するために、CD31、von Willebrand Factor、eNOS、AC133による細胞免疫染色を行った。次に48 well dishに培養した細胞のクラスター数をカウントしたところ、妊娠週数が進むにつれてクラスター数が増加し、両者の間に正の相関関係を認めた。さらには同妊婦の血清中のEstradiol濃度と血管内皮前駆細胞クラスター数との関連を検討したところ、Estradiol濃度が上昇するに従い、末梢血中血管内皮前駆細胞クラスター数は増加し、極めて強い正の相関関係を認めた。 以上の結果から、血管内皮前駆細胞は妊娠中の血管内皮機能の維持、胎盤形成、発育に重要な役割を担っている可能性が示唆された。さらに血管内皮前駆細胞の機能発現にはエストロゲンが深く関連すること、エストロゲンの血管保護作用は血管内皮前駆細胞を介して制御されている可能性が示された。今後、女性ホルモンによる血管内皮前駆細胞の機能制御を解明することによって、胎盤機能改善を目的とした細胞治療の開発が期待される。なお、これらの実験は東北大学医学部倫理委員会にてすべて承認されている。
|