研究概要 |
【目的】子宮体癌はエストロゲン作用の亢進がリスクファクターのひとつであり、乳癌同様に組織中のエストロゲン合成酵素(アロマターゼ)の発現によるパラクライン・オートクライン機構を介する癌細胞増殖促進の可能性が考えられる。我々は子宮体癌におけるアロマターゼ発現による癌の増殖・進展の機序の解明を目的とした。 【方法】患者の同意を得て採取した子宮体癌組織85例について抗アロマターゼ抗体を用いて免疫染色を行い、上皮・間質・筋層に分類して発現の有無を検討した。臨床病理学的因子は進行期・筋層浸潤・組織grade・年齢等に関して統計解析を行い、Kaplan-Meier法による生存分析も行った。一部症例についてPNAプローブを用いたISH法およびlight cyclerを用いた定量的RT-PCR法にてアロマターゼmRNAの発現を定量化した。また子宮体癌由来細胞株の培養を行いアロマターゼ阻害剤を添加してその増殖抑制効果の検討を行った。 【成績】臨床検体での検討では、アロマターゼは上皮52%、間質64%、筋層41%と高率に発現を認めた。上皮での発現は、筋層浸潤あり46%、なし73%、grade1 58%、grad2,3 32%とそれぞれ予後良好群に多く認められた(p=0.05,p=0.03)。筋層で発現する場合、予後不良であった(Wilcoxon p=0.05)。アロマターゼ蛋白とmRNAの発現は良く相関した。Ishikawa細胞株を用いたWST-1 assayでは、アロマターゼ阻害剤であるTZAの添加により濃度依存的に細胞増殖抑制効果を認めた。 【結論】アロマターゼ発現は子宮体癌細胞の増殖に関与し、特に筋層での発現が予後と相関することが示された。筋層のアロマターゼ発現は腫瘍の筋層浸潤を促進する可能性が示唆された。
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