研究概要 |
【目的】閉経後は虚血性心疾患をはじめとする動脈硬化性疾患が増加するが、それには生活習慣の違いや遺伝的素因の関与が示唆されている。Apolipoprotein E(Apo E)は肝内LDL受容体のリガンドとして機能し、遺伝子型(E2,E3,E4)の違いにより脂質代謝への影響が異なることが知られている。また酸化LDLの一種であるmalondialdehyde-modified LDL(MDA-LDL)は、動脈硬化惹起性LDLとして注目されており、動脈硬化進展に血管内皮機能は深く関与する。そこで我々は閉経女性における血清MDA-LDLおよび血管内皮機能とApo E phenotypeとの関連性について検討した。【方法】更年期外来を受診し同意の得られた自然閉経女性110例から空腹時採血を行い、血清MDA-LDLをELISA法にて測定し、プレチスモグラフィーを用いて前腕血流(FBF)増加反応を測定して、Apo E phenotypeを等電点電気泳動法により分析した。【結果】分析されたApo E表現型をもとにE2/2とE2/3をE2、E3/3をE3、E3/4とE4/4をE4と3群に分類した。E2(12例),E3(71例),E4(27例)の各群間の年齢、Body Mass Index、閉経後年数には有意差はなかった。血清MDA-LDL値はE2(91.1±6.9U/L)<E3(112.3±5.9U/L)<E4(128.8±9.9U/L)の順であり、E2とE4との間に有意差を認めた(P<0.05)。FBFはE2>E3.>E4の順で各群間に有意差を認めた(P<0.05)。【結論】閉経女性の血清MDA-LDLと血管内皮機能はApo E Phenotypeと関連があることが示された。閉経女性のApo E phenotypeの解析は動脈硬化を予防する上で重要であり、中でもE4は厳重な管理を要すると考えられた。
|