研究概要 |
実験を繰り返した結果、当初の我々の仮説とは異なる結論が導かれ、研究の方向性を大きく修正した。ヒト子宮内膜癌細胞株3株のアクチビン作用を検討し、アクチビンA刺激は癌細胞増殖には影響しないことが判明した。対照の卵巣癌細胞株の増殖をアクチビンAは濃度依存性に抑制した。FACSではこの3株は、typeIA, typeIB, typeIIA, typeIIBの4種類のアクチビン受容体を細胞表面に中等度発現をしていた。アクチビンA刺激は抗癌剤やanti-Fas IgM刺激によるアポトーシスに及ぼす効果にも全く影響しないことも証明された。以上から子宮内膜癌細胞のアクチビン不応性は、子宮内膜癌の不死化機構の一因と考えられた(論文投稿中)。 対照の卵巣癌細胞株由来のCDDP耐性株は受容体発現レベルに影響なくアクチビンの増殖抑制作用が消失していた。これは抗癌剤感受性シグナルとアクチビンの増殖抑制シグナルが交叉することを示唆している(論文投稿準備中)。アクチビンはTGF-βと受容体の一部やシグナル伝達物質を共有するが、TGF-βには3株に濃度依存性の増殖抑制作用を認めたことから、smad2/3蛋白以降の細胞内シグナルは正常に作動している。アクチビン刺激細胞のsmad2/3蛋白のリン酸化状況をwestern blot法で解析したところ、アクチビン刺激後のsmad2/3蛋白のリン酸化には有意の変化が認めなかった。このことは子宮内膜癌細胞ではアクチビン受容体変異によりアクチビン不応性となり、アクチビン産生制御が破綻し、癌細胞のアクチビン産生が亢進したことを意味している(論文投稿準備中)。 子宮内膜癌細胞ではアクチビンシグナルが途絶していることから、このシグナルの再回復法の発見が、癌治療への応用性への発展を期待できる。現在、分子レベルでのシグナル異常を解析している。
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