研究概要 |
研究課題「ヒト妊娠期のエストラジオール17-サルフェート代謝と各種疾患との関係を探る試み」の平成16年度における研究の結果、以下の点が明らかになった。 1.ヒト非妊娠期のエストラジオール17-サルフェート(ES)の尿中代謝物の分析を平成15年度に引き継いで行った。早朝第一尿を用いた定量分析の結果、ESの水酸化代謝物6α-,6β-,7β-OH-ESが主代謝物として検出された。また、15β-OH-ESは僅かに検出されたが、ステロイドA環の水酸化代謝物(2-,4-OH-ES)は痕跡程度しか認められなかった。 2.尿中LH値を基準として、月経周期における上記代謝物量を測定した結果、6α-,6β-,7β-OH-ESに周期的な変動を示す傾向が認められたが、一方で、夾雑物による影響も考えられた。 3.夾雑物のさらなる除去を目的に分析法の改良を試みた。測定対象物が何れもサルフェートであることから、酵素処理尿を陰イオン交換型の固相抽出カートリッジに導通後、HPLC分析する方法を確立した。その結果、6β-,7β-,15β-OH-ESは検出されたが、A環の水酸化代謝物は検出されなかった。 ヒト非妊娠期の尿中に2-OH-ESが検出されなかったことは、非妊娠時と妊娠時でのES代謝が異なっていることを示している。妊娠時では、尿中2-OH-ESは妊娠の経過と共に増加し、分娩後は急減することが確認されているのに対し、非妊娠時でのES代謝は、A環の水酸化よりもむしろ、B環及びD環の水酸化が主であることが判明した。
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