研究概要 |
(1)c-kit mutant不妊モデル実験 [方法]WBB6F1マウス(wild type)+/+,アミノ酸欠落があるheteroW/+,アミノ酸点突然変異をもつheteroW^v/+,機能喪失性突然変異遺伝子をもつW/W^vを使用し,精巣組織における蛋白と遺伝子発現を検討した. [結果]W/W^v mutantマウスではwildtype-heteroに比較し,精巣重量・細胞数は有意に低下していた.Flow cytometry分析にてc-kit陽性細胞数はwild type, hetero mutantマウスでは生後10日齢が最も多く,性成熟マウスは有意に低値を示し,W/W^v mutantマウスではいずれの週齢でも低値を示した. [結論]c-kitは配偶子形成過程の初期段階に深く関与し,不妊とくにmaturation arrestの発生にかかわる因子であることが示唆された. (2)抗ガン剤DXR投与配偶子形成障害モデル実験 [方法]ICR系雄性マウスを使用し,DXR投与群,DXR投与+TJ41(補中益気湯),TJ7(八味地黄丸),GTE(green tea extract)経口投与群,TJ41,TJ7,GTE単独投与群の計130匹(精巣260個)につき検討した. [結果]各群ともマウス重量・各組織重量には有意差は認めず.精巣重量はDXR単独投与群で強い抑制,TJ41併用投与群では正常,TJ7・GTE併用投与群では有意差なし,TJ41・TJ7・GTE単独投与群ではいずれも正常より増加した.RT-PCRでc-kit mRNAはDXR投与群で有意な低値を認めた.またTJ41,TJ7およびGTE併用群ではいずれも投与量依存的にc-kitの増加を認め,単独投与群では正常群よりも増加した. [結論]DNA合成阻害薬物によりc-kit発現の著明な低下を認めた.TJ41,TJ7およびGTEはc-kit蛋白を増加させ,その抗酸化作用により配偶子形成障害のrescueが可能であった. (3)ヒト造精機能障害精巣組織におけるc-kit発現解析 [方法]ヒト高齢者前立腺癌患者のGnRHa製剤長期投与後に摘出された精巣組織をインフォームド・コンセントのもとに使用し抗c-kit抗体(CD117)を反応させ,flow cytometry解析を用いてc-kit陽性細胞率を解析し,またRT-PCRを用いてmRNAの発現鼻を解析した. [結果]c-kit陽性細胞率の低下,mRNA発現の著明な低下を認めた. [結論]c-kitは配偶子形成過程,spermatogoniaの減数分裂機構へ強く関与することが示唆された.
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