研究概要 |
過去に、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の受容体(G-CSFR)を発現している頭頸部癌患者の予後が悪いことが判明し、その原因としてG-CSFR発現癌細胞株の浸潤能の亢進を確認した。頭頸部癌患者サンプルの免疫染色によりG-CSFR発現とRhoA発現とが相関していたことから、癌浸潤の一機序として細胞骨格制御因子であるRhoファミリー蛋白の関与が考えられたため、今回の実験を行った。以下に解明された結果を簡潔に述べる。 1.G-CSFR発現頭頸部癌細胞株(T3N1)においてRhoAならびにRasの発現をウエスタンブロット法により確認した。 2.この細胞株に対してrG-CSF刺激を行いG-CSFRを介したRhoファミリー蛋白の活性化が生じるかどうかをEZ-DetectTMRho activation kit (PIERCE biotechnology)を用い検討したところ、刺激5,10,20,30分後のRhoAの活性化は証明されなかった。時間を伸ばし60分後を検討してみたが、活性化は認められなかった。一方、Rasの活性化が5,10,15分で証明された。活性レベルのピークは10分で訪れ、30分で減衰した。従って、Rhoファミリー蛋白へのシグナル伝達は、刺激後15分までの早い時期に生じると考えられた。細胞骨格制御の主をなすと考えられるRhoAへのシグナル伝達は認められなかった。形態学的変化も認められなかった。 3.rG-CSF刺激後のRasを介した癌細胞形態の変化、増殖能の亢進の有無について現在さらに検討中である。 4.ケモカインレセプターのCCR6およびCCR7から、RhoAおよびRasへシグナルを伝達している可能性を突き止め、検討中である。
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