研究概要 |
手術ならびに生検時の頭頸部悪性腫瘍組織からRT-PCR法によりCOX-1,COX-2の発現を検討した。 上顎癌、口腔癌、中咽頭癌、下咽頭癌、喉頭癌の計20例の検体で発現を検討したところ、全例でCOX-1,COX-2の発現を認めた。対象として口腔、中咽頭の正常粘膜5例での発現を検討したところ、全例でCOX-1の発現を認めたが、COX-2の発現は1例のみで認めた。また、免疫組織化学的検討でも腫瘍細胞の細胞質内にCOX-2の発現を認めた。 このことから、頭頸部悪性腫瘍では正常組織に比べてCOX-2の発現が増加していることが推測された。 次いで、それぞれの発現を定量的に比較するべく、real time PCRを用いて各検体におけるCOX-1,COX-2の発現を検討した。しかし、baseとなるhousekeeping geneの発現量が安定的に測定できず、現在のところ発現量の定量的な比較は充分できていない。また、COXによって誘導されるPGE2はPGE2 receptorを介して作用するが、4種類のsubtypeが存在する。それらreceptorの発現が増強しているかどうか検討すべく、RT-PCR法でreceptorの発現を検討した。頭頸部悪性腫瘍組織ならびに正常粘膜でも今回の検討では明らかな発現を認めなかったが、primerを再調整して引き続き検討中である。 さらに、口腔癌から分離培養された扁平上皮癌細胞株を用いて、RT-PCR法によるCOX-1,COX-2の発現を検討した。これまでに用いた細胞株3種はいずれもCOX-2の発現を認めないか、弱い発現しか認めなかった。今後COX-2 inhibitorによる細胞増殖の抑制や、PGE2を介した作用機序を検討する予定だが、そのためにはCOX-2の発現の強い細胞株を用いることが望ましく、現在使用する細胞株を選別中である。
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