研究概要 |
本研究では早く糖尿病網膜症発症、進展のhigh risk(高危険度)群に属する患者を診断し、現在ある治療法を有効に使い網膜症の重症化を防ぐ検査法を開発することを目的とした。糖尿病網膜症、糖尿病黄斑症の重症度判定システムの整備として、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑症の病態、病像、重症度を自動的に数値化して解析、統計処理するために、コンピュータシステムを用いた画像処理、網膜断層像の新型光学的干渉断層計(OCT)を用いた解析法によるシステムを開発し、その応用を報告した。現在のシステムでは白斑を画像処理により検出することが可能である。今後、出血斑の検出可能なプログラムの開発を目指している。種々の新しい治療法の開発に際しての他覚的な評価の方法として網膜厚をOCTにより計測する方法が有効である事を示した。さらにこれら臨床所見に関連する危険因子をプロテオミクス解析、ELISAを用いて解析した。その結果、VEGF,可溶性VEGF受容体,IL-6,angiotensin II,TGF-β1、TGP-β2、NOx,8-OHdG,diacylglycerol kinase (DGK)が関連することを明らかにした。遺伝子診断(網膜症の重症化を予想する)のターゲットとしてVEGFの遺伝子が現時点では有望であることが示唆された。網羅的、体系的な因子検索としてプロテオミクス解析法を行い、眼内硝子体液の解析したところ400-600個のスポットが確認され、約40個の蛋白質の同定が可能であった。この方法は今後、網膜症の病態把握に応用が可能と考えられた。
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