研究概要 |
加齢黄斑変性や強度近視にみられる脈絡膜血管新生は,成人の失明原因として重要な問題である。これらの疾患における新生血管膜の病理組織学的検では,マクロファージなどの炎症細胞浸潤が一つり特徴であり,このような炎症細胞の浸潤が種々のサイトカイン分泌を引き起こし,病像の増悪を招くと考えられるが,炎症細胞集積機構は不明であった。我々は網膜色素上皮細胞(RPE)の形質転換による遺伝子発現の変化が炎症細胞集積に重要ではないかと考えた。本研究では強力なマクロファージ遊走因子であるmonocyte chemoattractant protein-1)に注目し,RPEの形質転換に伴うMCP-1の発現変化を調べた。その結果,脱分化したRPEでは分化RPEに比べ著明なMCP-1の発現上昇がreal-time PCR, ELISA法ともに認められた。さらに脱分化RPEでは転写因子NF-κBの活性化がみられ,NF-κBの活性化を阻害するプロテアソーム・インヒビターの添加によりMCP-1の発現上昇が抑制されたことからRPEの脱分化に伴うMCP-1の発現上昇はNF-κBの活性化を介したものであることが分かった。さらに抗酸化剤を添加するとNF-κBの活性化に引き続くMCP-1の発現上昇も抑制され,脱分化RPEにおいてNF-κB活性化を生じる病的刺激は酸化ストレスではないかと考えられた。
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