研究概要 |
本年度は以下の点が明らかとなった. 1.結膜における抗原特異的T細胞の検出. 抗原特異的T細胞をCFSEでラベルする,あるいはT細胞受容体トランスジェニックマウスを用いることにより抗原点眼により抗原特異的T細胞が結膜に浸潤することが明らかとなった. 2.抗原特異的T細胞の結膜局所での活性化. 抗原特異的T細胞を移入し4日後,抗原を点眼し経時的に結膜を採取し,蛋白抽出を行い,Lck免疫沈降物のリン酸化を検討したところ,点眼6時間目よりLckのリン酸化を認めたことから,T細胞は結膜で抗原点眼6時間目より活性化されることが判明した. 3.結膜におけるサイトカイン,ケモカインの動き 抗原特異的T細胞の移入により誘導した眼瞼結膜炎の結膜からRNAを抽出し,RT-PCR法で種々のサイトカイン,ケモカインの発現を検討した結果,Th1型のサイトカインは6時間目より発現を認め,以後48時間目まで持続することがわかった.一方,Th2型のサイトカインは6時間目,12時間目に発現のピークを認め,以後減弱することが判明した.これらのサイトカインの動きは浸潤細胞の表現型の動きと一致していた.すなわち,マクロファージは6時間目以降徐々に増加するが,好酸球は12時間目をピークに以後減弱していた. 4.ラット系統間でのIFN-γシグナルの差 ルイスラットとブラウンノルウェーラット間でIFN-γレセプターの発現の差と,IFN-γシグナル伝達の強度の差を見出した.この結果は,遺伝背景の違いにより,IFN-γの関与に差があることを示唆するものである. これらの結果は治療のタイミングを含め,レトロウイルスを用いた遺伝子治療に役に立つ基礎的データとなる.
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