研究概要 |
Vogt-小柳-原田病は、HLA-DR4に提示された自己のメラノソーム関連抗原をCD4^+T細胞が認識し、活性化することにより生じる自己免疫病と考えられているが、その発症機構は未だ不明である。今回の研究で我々は、Vogt-小柳-原田病患者の末梢血細胞におけるmRNA遺伝子発現プロファイルをDNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析し、その発症に関与する遺伝子を同定することを目的とした。 10例の初発Vogt-小柳-原田病患者(ステロイド治療前)の末梢単核球における遺伝子発現を約20,000個の遺伝子を同時に解析可能なアマシャム社製、オリゴマイクロアレイを用いて解析し、患者群と平均年齢に有意差を認めない健常人11名の平均遺伝子発現と比較した結果、すべての原田病患者で2倍以上の発現増強がみられた遺伝子が556個、発現低下がみられた遺伝子が145個検出された。発現増強が認められた遺伝子の中には、T細胞の活性化シグナルであるZAP-70、免疫担当細胞の遊走を促進するchemokine、CCL2,CXCL4,CXCR4,Th1免疫反応に関与するIFN-γ receptor 1、IFN induced transmembrane protein 1、IFN induced transmembrane protein 2などの発現が認められたが、その中でもMHC分子による抗原提示を促進するcathepsin Sの発現が100倍以上原田病患者で増強していた。オリゴマイクロアレイの結果を裏付けるために、cathepsin Sの発現をreal time PCRにより解析したところ、同様の結果がえられた。我々はcathepsin Sの発現増強が原田病の発症要因の1つと考え、原田病患者の急性期、緩解期における血液中のcathepsin S濃度を測定し、疾患の病状との相関について検討中である。
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