脊髄髄膜瘤に伴うキアリー奇形の進行による脳の発達抑制・下肢運動障害・膀胱直腸障害を回避することが可能であれば、脊髄髄膜瘤の予後は極めて良好となる。これらに対する治療を出生後に行っても、その障害は不可逆的なものであり、改善の見込みはない。そこで考え出された治療法が脊髄髄膜瘤の胎児治療である。 そこで問題となるのは、患児の状態を母体外から評価する方法を確立することである。超磁気を用いて母体外から胎児脳運動野を刺激して、胎児下肢の運動を超音波にて検出する方法を考えた。これを用いて、平成14年度は、正常な羊胎仔に対して妊娠のさまざまな段階において、超磁気刺激を施行した。1T、100μsecで刺激することにより、下肢の運動が観察されることを確認した。そして、この実験にしようした羊胎仔の脳を摘出した。 平成15年度は、この脳細胞を顕微鏡で観察して、病理学的検討をおこなった。その結果、超磁気で刺激した羊胎仔と無処置の羊胎仔とを比較したが、神経細胞数・神経線維網の発達の程度には、有意差はなく、脳細胞への超磁気の影響はないという結果を得た。さらに、本年度は、在胎75日目に羊胎仔に脊髄髄膜瘤を作製して、術後5日毎に未治療群と胎児手術施行群との超磁気刺激による下肢の運動評価を施行した。さらに在胎90日目に退治手術を施行して、髄膜瘤を修復して、その後の下肢の運動機能評価を施行した。胎児手術は。通常の修復術を試行したもの、髄膜瘤部分をアロデルムやゴアテックスで被覆したものの3週類の修復法を用いた。その結果、胎児手術による治療群では、下肢の運動障害がないが、未治療群では、下肢の運動障害が認められた。修復法の種類別の有意差は認められなかった。
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