研究概要 |
発生期におけるMash1の機能を検索するために、Mash1ノックアウトマウスの有郭乳頭を観察した。生後直後のMash1ノックアウトマウスの有郭乳頭では、味蕾細胞のマーカーの1つであるPGP9.5陽性細胞がほとんど認められず、さらに有郭乳頭上皮への神経線維の侵入もほとんど認められなかった。このことから、Mash1は上皮細胞から味蕾細胞への過程で重要な役割を演じていることが推測された。さらに味蕾の前駆細胞と考えられるMash1陽性細胞が神経線維の誘導に関与していることが推測された。 さらに、味蕾内の細胞型への分化の制御機構を解明するために、Notch関連遺伝子と味蕾細胞のマーカーとの2重染色を行った。その結果、Mash1は味蕾細胞の中の3型細胞のマーカーであるセロトニン、NCAMとの局在が一致していた。また、Delta1とHes6は2型細胞のマーカーのgustducin, PLCβ2と局在が一致した。2型細胞と3型細胞のマーカーのPGP9.5はMash1,Delta1,Hes6との局在が一致した。一方、Notch3は味蕾内で味覚受容細胞と考えられている2型、3型細胞のマーカーのgustducin, PLCβ2,セロトニン、NCAM, PGP9.5とは局在が一致せず、1型細胞において発現していることが推測された。 有郭乳頭におけるNotch1コンディショナルノックアウトマウスの解析は、野生型との差は認められなかった。このことは、Notch1以外のNotchホモログによって、Notch1の機能が補填されていることが推測された。
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