研究概要 |
Epstein-Barr virus (EBV)は、リンパ腫や上咽頭癌の発生との関連性が知られているが、その一方で発癌との関連性を否定する報告もある。本研究の目的は、癌化した細胞の生物学的活性(特性)におけるEBVの影響を検索することであったが、EBV感染細胞の取り扱い上の問題から、当初の申請書に示したようなco-cultureによる感染系の確立にはいたらなかった。昨年度までの実験で、扁平上皮癌の1組織型である類基底細胞癌由来細胞株BSC-OF(北海道医療大学・安彦善裕先生より供与)は、EBVには感染しておらず、他の口腔扁平上皮癌細胞株HSC2,HSC3,HSC4,Ca9-22,SAS, KBより、急速な増殖と高い浸潤能を持っことを明らかとした。今年度は、BSC-OFの高い浸潤能にosteopontinが関与していることをantisense oligonucleotideを用いることにより明らかとした(Cancer letters,2005)。また、急速な増殖がconnexin43を遺伝子導入することにより抑制されることを見いだした(IADR,2003にて示説発表)。これらの結果をふまえ、BSC-OF細胞にosteopontinのantisense oligonucleotideやconnexin43のcoding regionを効率的に遺伝子導入し、その後、細胞内でそれらの遺伝子のself-replicating systemを確立することを考え、EBVの主要なElementであるEBNA1を含むvirus vector系を構想中である。
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