研究概要 |
本研究では歯周病菌Porphyromonas gingivalis (以下P.g.と略記)を用い,病原因子である線毛の形成機構の解明を目指し解析を行っている. <1.既得線毛欠損株の解析> 当研究室で今までに単離された線毛欠損株の解析を続け,既知の遺伝子に変異を持たない株AG17-13を見いだした.トランスポゾンを含む当該領域をクローニングし,塩基配列解析を行った結果.PG0359と0360の間に挿入があることが明らかになった.この領域は機能不明のORFを4つ含む一連のオペロンを形成していると考えられる.今後解析を継続し,どの遺伝子が実際に線毛形成に関わっているか明らかにする予定である. <2.線毛構成タンパク質FimAや線毛発現制御センサーFimSの相互作用因子の探索> 大腸菌を用いたtwo-hybrid系を用いて,線毛構成タンパクFimAや,線毛の制御に関わる二成分情報伝達系FimSと相互作用する因子の探索を試みたが,バックグラウンドが高く,相互作用因子の同定には至らなかった. <3.線毛欠損・輸送異常変異株の単離同定> 改良型トランスポゾンを用いたmutagenesisを行ったが,我々の使用しているP.g.株(ATCC33277)に対しては接合効率が低かった.そのため,従来のトランスポゾンを用いて,接合及びスクリーニング法を再検討し,最適化を行った.その条件下で大規模に接合実験を行い,新たに得られた7000接合体の解析を行った.PCRにより既知遺伝子に変異を持つものは解析前に除外した.その結果,新規の線毛欠損株を2つ新たに発見した.当該領域のクローニング及び塩基配列解析を行ったところ,それぞれfimAの下流及びPG1189の上流に挿入があることが判った.これらの領域については,ゲノムプロジェクトが行われたW83株と,我々の使用しているATCC33277株で配列が相当異なることが解析結果から明らかになっており,ブライマー設計にゲノム情報が使えない.今後ATCC33277株でこれらの領域のクローニング及び塩基配列決定を行う予定である.W83株は元々線毛を欠損している株であることから,これらの領域の比較検討によって,線毛形成機構の解明に繋がることが期待される.また現在新たに3000の接合体を得ており,これらについても解析を継続中である.
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