研究概要 |
近年の社会の高齢化に伴い,摂食・嚥下障害を持つ患者が増加している。嚥下障害の最も大きな問題は誤嚥であり,この有無を最も正確に検査可能といわれているX線映画法あるいはビデオX線透視法,別名嚥下造影検査法が一般に行われている。 この検査では,使用する検出器のImage Intensifier(以下,I.I.)に起因する画像に歪みが生じるという基本的な問題を抱えている。臨床的には,得られた画像を定性的に評価するため問題にならないことが多いが,定量的な計測を行うためには,この歪みを補正する必要がある。過去に報告されているI.I.の歪み補正では特別な機器を用いているため,一般的には適応できない。当施設だけではなく,この検査を行っている他の施設でも簡単に応用できる方法を考え,汎用コンピュータと市販のソフトウエアを用いてI.I.の画像歪み補正の検討を行うことを目的とした。 I.I.の歪み補正の方法は,Digital Subtraction Angiography装置を使用し,自作した直径1mmの鉛円板を40mm間隔に配置したファントムを撮影し,その画像をビデオテープに記録した。このデータ(歪み画像)をコンピュータに取り込み,鉛円板間の距離を計測した。その後,歪み画像を市販のソフトウエアを使用して,歪み補正を行い同様に計測した。その結果,歪み画像は平均の長さ40.0±1.6(37.0〜43.7)mm,補正画像は40.0±0.6(38.2〜41.4)mmとなり,補正処理の有効性が確認できた。同一測定者内の再現性と経時的な歪みの変化を調べる目的で,3年間に6回撮影・計測したが,分散分析法により統計的に有意差は認められず,また,一連の補正処理は自動化でき,広く応用可能な手法であることが明らかとなった。
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