研究概要 |
本研究は、効率的な歯質除去が可能なことで注目されているEr:YAGレーザーを用いてう蝕歯質を除去する際に重要となる除去終了の指標を確立することを目的に行った。 14年度の研究において、(1)Er:YAGレーザー照射健全歯質に対するう蝕検知液の染色性,(2)レーザー照射歯質において歯面性状測定器であるDIAGNOdent (KaVo社)の示す値,(3)DIAGNOdent値10を指標としたう蝕除去後の歯質分析について検討した。15年度の研究では、14年度の研究成果を論文にまとめ、日本歯科保存学雑誌へ投稿した(日歯保存誌・46(6),935-940,2003)。さらに、指標とするDIAGNOdent値を30以下20以上(Gr1)、20以下10以上(Gr2)、10以下(Gr3)という3つのグループを設定し、それぞれの窩底部象牙質についてマイクロラジオグラム、EPMA分析、SEM観察を行った。マイクロラジオグラム観察では、Gr1の表層にエックス線吸収度の低下した像を認め、Gr2ならびにGr3ではエックス線吸収度の低下はみられなかった。EPMA分析ではGr1において、Ca,P濃度の低下した部分を認めたが、Gr2ならびにGr3はCa,P濃度の低下はみられなかった。さらに、SEM観察から、Gr1の表面には泥様構造物を認めており、齲蝕象牙質の外層にあたる部分の残存していることが明らかとなった。また、Gr2とGr3とを比較するとGr3の方が、やや過剰に蒸散されている傾向が認められた。この内容は、第119回目本歯科保存学会ならびに第15回日本レーザー歯学会にて発表した。16年度は、15年度の研究成果を第9回国際レーザー歯学会にて発表し、現在、J.Dentistryに投稿中である。さらに、Gr2の条件にて齲蝕歯質除去終了とした歯質に対する接着強さの測定をおこない、回転切削の場合と同等であることを第121回日本歯科保存学会、第16回日本レーザー歯学会、第83回IADRにおいて発表した。 これまでの一連の研究により、Er:YAGレーザーを用いて齲蝕歯質を除去する際にはDIAGNOdent値10以上20以下を除去終了の指標とできることが明らかとなった。
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