研究概要 |
部分床義歯の床下粘膜における圧力分布を把握することは,機能時の咬合力により負荷される負担圧を分散させ,床下組織を保護するという観点から非常に重要である.しかしながら,床下組織へ加わる圧の大きさおよびその分布,またそれらが義歯設計によりどのように変化するのかはほとんど明らかにされておらず,口腔内で実測された義歯床下圧力分布に基づいた部分床義歯設計方針も確立されていないのが現状である. 本研究は,部分床義歯粘膜面に超薄型圧力多点同時測定シートを応用することにより,床下粘膜負担圧分布とその動態を明らかにし,これらの知見に基づいて部分床義歯の支持機構に関する検討を行うものである. 本研究で用いる圧力測定シートの特性把握および校正を行った結果,一定の荷重を加えた場合の出力は,荷重開始1秒後に大きく変化,その後徐々に増加して2分後よりほとんど変化しなくなることが明らかとなった.繰り返し荷重を行ったところ,特定の回数より異常な出力上昇が認められ測定回数の限度が存在することが明らかになった.直線性を持って測定可能な圧力の測定範囲は50kpa〜10Mpaと幅広く口腔内応用が十分可能であることが判明した. 口腔内応用に際し,患者に実験の趣旨を十分に説明し,同意を得た.部分床義歯粘膜面に接着剤を用いて測定シートを貼付後,義歯を装着し最大咬みしめおよびグラインディングを行わせた.その結果,咬みしめ強さが大きくなるに従い遊離端遠心部の圧力が上昇した.グラインディングにより歯槽頂付近で圧力の大きな箇所が移動するものの,その他の部位では大きな変化が認められなかった.これらの特徴は近心レストを付与した義歯よりも遠心レストを付与した義歯において著明であった.
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