研究概要 |
生体用チタン合金は,形成外科材料や歯科材料として利用されている.チタンは軽量で機械的性質や耐食性に優れているが,周辺加工技術の不足がチタンの歯科利用における用途を限定している.本研究では,ろう材にアモルファスを応用し,高強度,高耐腐食性および優れた操作性を備えたチタン用ろう材を開発することを目的としている.これまでの結果では,ろう接装置の予備排気性能及び冷却効率の向上を図った結果,接合可能な金属ガラスの組成が増え,また品質の向上が可能となった.特に強度及び耐食性に置いてPd系で優れた結果が得られ,従来材料に変わるTi用ろう材実用化の可能性が得られた.その一方,強度に著しいばらつきを持つという問題点も明らかにされた. そこで今年度は接合強度に関わる因子を特定するため,Pd系,Zr系アモルファスおよびTi系高強度合金でろう接したTi-Al-Nbの接合部断面組織観察及び引張試験後の破面観察を行なった.Zr系及びTi系ろう接合材の流ろう部は何れもデンドライトが見られ,急冷凝固組織を呈していた.一方,最も優れた強度を持つPd系ろう接合材のSEM-EDX観察の結果では,ろう部の殆どがマトリックスをガラスとした包晶析出で構成されており,従って流ろう部は高い強度が維持されていることが示唆された.また,早い段階で破断した接合試料の界面付近には,母材Ti拡散層が数十μmの厚さで存在しており,またこれらの組成や組織が破面観察の結果とほぼ一致する.すなわち,破壊は被接合材との界面付近で生じ,界面に出来るTi拡散層が接合強度を支配していることが明らかになった.以上の結果から,チタン合金の特性を生かしつつ生体内で安全かつ十分な強度を持つ歯科用チタン合金の接合用ろう材となりうる可能性を示唆した.得られた結果は,国際歯科研究学会(IADR04)及び平成16年度日本金属学会秋期大会において発表された.
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