研究概要 |
平成15年度は,前年度の研究において変化が認められた対角帯核・内側中隔核と相互的な投射があり,さらに.,記憶・学習機能と関連性がある海馬のacetylcholine(ACh)に顎口腔系からの求心性情報の障害が与える影響について調べた. Wistar系雄性ラットを用い,対照群,粉末飼料群,臼歯切除群の3群に分割し.生化学的検討を行った. 生化学的検討を行うために,観察週齢になった時点で,脳内酵素の活性を賦活化させるためにmicro waveを用いて固定を行った後,直ちに,脳の全摘出を行った.その後,摘出した脳を7部位に分割した.その後,分割した海馬は,固定化酵素カラムを取り付けた高速液体クロマトグラフィー(HPLC-ECD)にてAChの測定を行った.なお,Lowry法により,海馬の蛋白量を定量し,HPLC-ECD法にて測定したACh濃度の補正を行った.その結果,海馬では,対照群に比して臼歯切除群においてACh濃度の有意な減少を認めた. さらに,同実験群を用いて,記憶・学習機能を検討するため受動回避反応実験を行い反応潜時の測定を行った.観察週齢になった時点で,ステップスルー型受動的回避反応測定装置を用いて学習・記憶実験を行った.その結果,対照群に比して臼歯切除群において反応潜時の有意な短縮が認められた. 平成14年度および平成15年度の研究結果から,歯の喪失に伴う咀嚼機能の低下や歯根膜の機械的感覚受容器の喪失による機能時の顎口腔系からの求心性情報の障害が,記憶・学習機能を含む中枢神経系と関連性があることが示唆された. また,今回の結果は,歯の喪失をAlzheimer病の危険因子の一つとして挙げているWHO,米国NIA, EC の「痴呆」に関する共同研究と何らかの関連性があるものと考えられる.
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