研究概要 |
真菌は、日和見感染の起因菌として最も高頻度に分離される微生物種の一つである。しかし一般的に典型的な感染症状が現れにくく感染早期の治療が困難である場合が少なくない。一方高齢者の誤嚥性肺炎の原因としても真菌Candida属の関与が示唆されている。従って高齢者オーラルヘルスケアを推進するためにも真菌感染の早期診断法の確立が重要である。しかし高齢者の口腔内における真菌生息状況およびその病原性に関しては不明な点.が多い。そのため、口腔内に生息する真菌の検出システムを開発するとともに、全身性疾患との関与を検討する。 今年度は、14年度〜15年度にかけ被験者185名中115名の洗口液より採取した真菌を培養しDNAを抽出し名古屋大学の神戸らにより開発された迅速かつ高感度な早期診断法であるDNA topoisomerase II遺伝子を標的としたミックスプライマーを用いたPCR法にて病原性真菌Candida属の代表的5菌種(C.albicans, C.tropicalis II, C.glabrata, C.parapsilosis I, C.parapsilosis II)を同定した。検出された真菌のうちC.albicans 50%、C.glabrata, 22.6%、C.tropicalis II 6%、C.parapsilosis II 6%、C.parapsilosis I 3.6%の割合で同定された。検出傾向としては年代に限らずC.albicansの検出率が最も高く、次いで若年層ではC.trobicalis IIの検出率が高くなった。また60歳代以降ではC.glabrataの検出率が高くなったことから口腔内の環境の変化などから菌層の変化が出る可能性が示唆された。また年令が上がるにつれて2菌種以上の複合感染率が高くなる傾向が得られた。 今後は難治性に限らず慢性炎症性疾患、口腔粘膜疾患に対する菌種、菌層の違い、.および全身性疾患への関連性を検討していくと共に今回採取された真菌の中で未同定となった菌種の解析を進めていく。
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