研究概要 |
昨年度、骨基質遺伝子であるalkaline phosphatase (ALP),type I collagen (ColI),bone sialoprotein (BSP),oseteocalcin (Oc),osteopontin (Op),Cbfa1の発現の比較を半定量性Reverse transcritption-polymerase chain reaction (RT-PCR)法にて検索しが,ALP, Oc, Opにおいては増幅が認められず、BSP, ColIにおいては細胞間における発現差が認められないものの、Cbfa1,BMP-2の発現がHSG-AZA3細胞において著明に増強していることを確認している。しかしながら、DNA脱メチル化剤5-aza-2'deoxycytidine処理後のHSG細胞では、Cbfa1,BMP-2 mRNAの発現変化は認められないため、HSG-AZA3細胞ではこれらの因子の発現に影響を与えるようなメチル化遺伝子の活性化が生じていることが予想される。そのため、HSG細胞を上記脱メチル化剤で処理することにより、発現変化を生じる遺伝子をcDNAマイクロアレイ(日立ソフト)にて単離した。その結果、骨基質関連遺伝子の発現変化は認められなかったが、機能不明のDNAJC8と癌抑制遺伝子p15において、5-aza-2'deoxycytidine処理後のHSG細胞において、約4倍程度の発現上昇を認めた。そのため、これら遺伝子に対する特異的PCRプライマー(DNAJC8-UP:5'-ACAATTGTAGAGGAGGATGA-3',DNAJC8-DN: 5'-AGCAGGAAGGGAGATAGCAG-3',p15F:5'-ATGCGCGAGGAGAACAAGGGCAT-3',p15R:5'-GGGCGGCTGGGGAACCTGGGCGTCA-3')を設計し、RT-PCR法を用いてこれら遺伝子の発現変化を再確認したところ、双方の遺伝子において軽度の発現上昇を認めた。次にこれら遺伝子におけるプロモーター領域をヒトゲノムプロジェクトの配列よりコンピュータークローニングにて単離した。しかしながら、既存のメチル化遺伝子に比較して、TATA boxとその近傍におけるCpG領域は少なかったことより、これら遺伝子の5-aza-2'deoxycytidine処理による発現上昇は、本薬剤の脱メチル化作用に非依存的なものであることが示唆された。現在、3倍程度の発現上昇が認められた数種類の遺伝子に関して同様の方法を用いて検索中である。
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