研究概要 |
p53新規ターゲット遺伝子p53R2が,ヒト癌治療における化学療法感受性に関与していることを明らかにしてきた。本年度は,口腔癌細胞株SAS,HSC-4,Ca9-22,および乳癌細胞株MCF7そして正常皮膚線維芽細胞NHDFを用いてp53R2の発現と5FU感受性との関連を検討し,p53R2が高発現している細胞株は5FUに抵抗性を示すことを明らかにした。そして,各癌細胞に5FUを作用させると,正常型p53を持ったものではp53依存的にp53R2発現が誘導されるのに対して,変異型p53を持ったものではp53非依存的にp53R2発現が誘導されていた。 また,具体的な口腔癌治療の分子標的として,このp53R2が有用であるかどうかを検討するために,RNA interference法による特異的タンパク発現阻害作用を利用して,p53R2発現阻害を行った。するとRNA interference法によりp53R2蛋白は癌細胞特異的に発現が阻害され,さらに,5FU感受性を増強させることが明らかとなった。 これらの結果から,p53R2は口腔癌の分子標的治療において重要な役割を果たす可能性が示唆され,抗癌薬との併用により治療効果の増強につながることが明らかとなった。
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