研究概要 |
骨組織を健全に維持するためには、骨芽細胞の増殖分化が正常に行われていなければならない。本年度はマウス骨芽細胞株であるMC3T3-E1細胞を用いて、骨芽細胞の分化について検索を行った。デキサメサゾンと平行して、高脂血症治療剤として臨床で広く用いられているでスタチンに着目した。最近、このスタチンがコレステロール産生抑制以外の多面的効果(pleiotropic effect)を持つことが分かった。この効果には、骨芽細胞分化制御能もあり、注目されているMC3T3-E1細胞は10^<-7>Mのシンバスタチンの添加により、Vehicle添加に比べ有意にBMP-2,OCN, Col-1,の遺伝子転写が促進された。一方、MMP-1,MMP-13の遺伝子転写は抑制された。また、In vitro Bone formation assayでもコラーゲンの合成は促進されており、さらに非コラーゲン性蛋白も合成促進が見られた。そして10^<-6>Mシンバスタチン添加では、培養14日目でmineralized nodule形成はVehicle添加に比べて有意に促進した。しかし、この促進はコレステロール中間代謝産物であるメバロン酸やゲラニルグラニルピロリン酸を加えることで消失した。また、Rho kinaseのインヒビターであるY-27632の単独添加でも同様の石灰化促進が起こった。シンバスタチンのMC3T3-E1細胞に対する石灰化促進作用は、メバロン酸代謝経路のブロックにより、ゲラニルゲラニルピロリン酸の合成を抑制し、Rhoなどの、Small GTP蛋白のプレニレーションが抑制する事が原因だと推察できる。これにより、BMP-2,OCN, Col-1のmRNA発現は促進されたと考えられる。これらの結果シンバスタチンは骨芽細胞において、骨形成促進作用を有することが示唆された(Maeda T et al. Journal of Cellular Biochemistry,2004 in press.)
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