研究概要 |
鼻閉が成長・発育期の食物岨境および呼吸に影響を及ぼすと考えられるdental stageIIIA期の小児を対象に、鼻閉が咀嚼機能および呼吸機能に及ばす影響について検討を行ってきた。現在までに、鼻呼吸を常態とする小児と鼻疾患を有し、口呼吸を常態とする小児を対象に咬筋活動量、咀嚼周期、呼吸周期、呼吸量、動脈血酸素分圧について機能面からの検討および顎顔面における形態面からの検討を行い、鼻閉による咀嚼機能と呼吸機能の相互関係について検討を行ってきた。これまでの研究結果より鼻疾患を有し、口呼吸を常態とする小児の動脈血酸素分圧の低下は顎顔面形態および呼吸機能について関連があることが予想されたため前年度に続き、これらの検討を行った。 研究方法: 1.被験者の承諾:dental stage IIIA期の個性正常咬合を有し、鼻腔ならびに呼吸器系に異常がないことが確認された健康な小児(以下,鼻呼吸群)と慢性鼻疾患を有し口呼吸を常態とする小児(以下,口呼吸群)を対象に、保護者および小児に本実験の主旨を十分に説明し、同意を得た。 2.昨年度に引き続き、鼻呼吸群と口呼吸群において安静時およびガム咀嚼時の動脈血酸素分圧の測定を動脈血酸素飽和度測定装置(PULSOXTM-5MINOLTA)を用いて行った。 3.鼻呼吸群と口呼吸群における歯列形態の測定をセファロ分析ソフト(Win ceph)を用いて行った。 結果: 口呼吸群は鼻呼吸群に比べ、1.安静時で動脈血酸素分圧の有意な減少。2.ガム咀嚼時で動脈血酸素分圧の減少傾向が認められた。これらの結果より口呼吸群は鼻呼吸群に比べ,安静時においては呼吸の深度が浅く,呼吸周期および呼吸量の減少,有意な動脈血酸素分圧の減少が認められた。また,ガム咀嚼時においては安静時に比べて周期性があり,呼吸周期,呼吸量および動脈血酸素分圧の減少傾向が認められた。また、口呼吸群における動脈血酸素分圧は咀嚼時よりも安静時のほうが影響を強く受けていることが明らかとなった。3.前歯部歯列弓幅径が狭小および上顎前歯の舌側傾斜が認められた。以上の結果より口呼吸児の歯列弓が狭く、鼻腔底容積も小さいことが予想され、これらのことが動脈血酸素分圧および呼吸量に影響し、さらに咀嚼機能に影響を及ばすことが示唆された。
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