本研究の目的は口腔内細菌を指標とした口腔ケアによる口臭除去効果についての基礎的実験を行うことある。被験者は口腔診査を実施し、実験条件を満たす20〜30歳代の男25名とした。被験者の食事状況は実験開始1日前から同じとした。また、実験期間の口腔ケア法によりA〜E群(各5名、A群:口腔ケアなし、B群:毎食後水道水30m120秒間の含嗽3回、C群:毎食後舌ブラシによる舌清掃後にB群と同様の含嗽、D群:毎食後0.2%グルコン酸クロルヘキシジン配合洗口剤10m120秒間含嗽後にB群と同様の含嗽、E群:C群と同様の舌清掃後にD群と同様の含嗽)に分けた。口臭および細菌測定は起床時、朝食後、昼食前、翌朝起床時に実施した。口臭測定にはガスクロマトグラフを用い、VSCs(H_2S、CH_3SH、(CH_3)_2S)を検出した。細菌測定は舌表面または歯面を滅菌綿棒で擦過し採取した試料を滅菌蒸留水に懸濁し、血液寒天培地またはブルセラ寒天培地を用いて混釈平板法にてCFUを算出した。 口臭測定の結果、いずれの群でも朝食・口腔ケア後のVSCs濃度は、朝食前に比べ有意に低下した。それらは昼食前の時点で再び上昇したが、A群とB群ではC〜E群に比べ有意に高値であった。翌日朝食前のVSCs濃度はA群とB群では朝食前のレベルであった。C〜E群では、VSCs濃度は昼食前に比べやや上昇したものの、A群とB群に比べ有意に低値であり(B群のCH_3SHを除く)、さらに朝食前と比較しても有意に低かった。また、細菌測定の結果、朝食前の舌苔中から10^6〜10^7の好気および嫌気性菌が検出されたが、その数は被検者間で明らかな違いがみられた。実験開始後の菌数の変化は、ほとんどの実験群および菌種で朝食・口腔ケア後に減少し、翌日朝食前にかけて再び増加する傾向にあった。舌苔中細菌数から検討すると、舌磨きおよび洗口剤の短期的効果は認められなかった。
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