研究概要 |
本研究はこれまで全く例の無い不斉S_N2反応を開発し,ラセミの2°-アルコールに対しその反応を適用することで立体特異的に一方のエナンチオマーのみを立体反転を伴ってアシル化し,ついで,アルカリ条件で後処理することで,合成化学的に非常に利用価値の高い光学活性2°-アルコールを得ることを目的としている.鍵となるS_N2反応には光延反応を選択し,それに使用される試薬の一つであるホスフィンに不斉情報を導入しその目的を達成する計画である.さらに,本反応により生じるホスフィンオキシドが触媒的に働き得れば,その利用価値はより高いものとなることが期待される.そこで,本研究遂行のための鍵となるホスフィンオキシドの効率的還元法の探索を行った.その結果,トリフェニルホスフィンオキシドをチタンテトラクロリド存在下,トリクロロシランとトルエン中加熱することで,トリフェニルホスフィンへと容易に変換できることが判明した.よって,光延反応によって生じるホスフィンオキシドを同一反応系内において原料であるホスフィンに戻すことが出来る可能性が強く示唆される.
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