研究概要 |
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌MRSAの蔓延は,対感染症薬剤療法への脅威となっている.MRSAは,耐性に必須なペニシリン結合蛋白質の遺伝子mecAを有するとともに、組換え酵素類縁の遺伝子ccrAおよびccrBをも有している.これらの遺伝子によりコードされるCcrAおよびCcrB蛋白質は,耐性遺伝子カセットを部位特異的に切り出し,挿入する働きを持っており、薬剤耐性が急速に蔓延する一因となっている. 研究代表者は,耐性遺伝子組換反応がどのような三次元構造によって行われるのか明らかにするため,Ccr蛋白質の性状を検討するとともに結晶化を行った.昨年度までに構築した組換え酵素発現系を用い,発現・精製した.様々なオリゴDNAとCcrB蛋白質との相互作用を検討したところ,耐性遺伝子組換え部位に保存されている29塩基対のコンセンサス配列がCcrB蛋白質と結合することが初めて明らかとなった.CcrA蛋白質はRNAと結合した多量体として得られた.これをRNase処理すると著しく沈殿するものの,このコンセンサス配列DNAを共存させると,一定条件下で沈殿しにくくなることから,CcrAもDNAとの相互作用が示唆された.CcrAは,CcrBとアミノ酸配列で30%程度の相同性を示すものの,C末端部分で欠損した部分があり,また,難溶性であるため,CcrBを優先して結晶化した.結晶化はCcrB単独およびDNA複合体として行い,結晶化条件の最適化を進めている.特に硫酸イオンによる沈殿効果が大きく,CcrBのDNA結合部位に硫酸イオンが結合しているものと考えられる.薬剤耐性遺伝子の組換え阻害剤の設計に示唆を与える.
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