研究概要 |
小胞体に蓄積した変性タンパク質の分解系である小胞体関連分解(ER associated degradation : ERAD)に関与する遺伝子KF-1をバイオインフォマティクス的解析により,単離・同定した.KF-1は実際に小胞体に局在し,ユビキチンリガーゼ活性を有していることを示した.また,小胞体ストレス誘導されることが判明した.さらに,KF-1を哺乳類細胞に過剰発現させることによって小胞体ストレスによる神経細胞死が抑制されるか解析したところ,小胞体ストレス特異的に細胞死を抑制した. 小胞体ストレスによって,転写因子NF-κBが活性化することを見出した.この活性化は小胞体ストレスセンサー分子IRE1とTRAF2(tumor necrosis factor receptor-associated factor 2)を介したものであることを,それらのドミナントネガティブ体を用いて証明した.また,IRE1とTRAF2は結合し,IRE1のC末端側のリボヌクレアーゼ領域がTRAF2との結合に必要であることを見出した. 脳虚血モデルマウスにおいて,HRD1 mRNA発現を検討したところ,HRD1 mRNAが大脳皮質および線条体において増加することが明らかとなった.さらにin vitroの系で低酸素/再酸素化を負荷するとHRD1 mRNAはグリア細胞においては発現が上昇したが,一方神経芽細胞腫Neuro2aにおいては発現に変化は認められなかった.したがっで,脳虚血は小胞体機能を障害すること,HRD1は虚血による細胞死に保護的に関与することが示唆された.
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