研究概要 |
本年度の研究実施計画として、二点をあげ、それぞれについて下記の成果をあげた。 1,抑制神経伝達に対するBDNFの長期亢進効果について、シナプス後膜側細胞からの二次的メディエーターの存在が考えられた(投稿中)ので、これを探索する。 2,神経回路形成に対する、より高次でのBDNFの役割の追求。 1,まずBDNF受容体の下流にあることが知られる各種の情報伝達経路を薬埋学的に阻害し、二次的メディエーターの活性化がどの経路依存的なのかの解明を試みた。その結果、抑制神経伝達に対するBDNFの長期亢進効果は、現在までに調べた範囲では抑制がかからない堅固な反応であった。今後、前期の実験の妥当性をより高める一方、Fyn、PGE2-EPRなどの関与についても可能性が考えられるので検討する。 2,BDNFを投与したすぐ後の神経細胞はパッチピペットからのシータ、ガンマ波様電流注入に対して、より確実に周期的に、さらに位相に対してより早いタイミングで発火するようになることを発見し、Biophys.J.86(3):1820-8.に発表した。位相に対して発火が早くなるということはスパイクタイミング依存的可塑性の研究を鑑みると、その細胞がより、神経回路形成に関与しうることを示唆する。メカニズムの解釈は多数考えられるが、今までに研究代表者の研究室で発見したBDNFの抑制性神経伝達への関与を考慮しても説明可能であり、今後の複合的発展が期待できる。
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