研究概要 |
1.B.cereus菌由来スフィンゴミエリナーゼ(SMase)のHis151とHis296をAlaに置換した変異体(H151AとH296A)について種々の実験を行った結果,H296Aには加水分解作用がなかったがH151Aには僅かに残っていた.そこでH151Aの酵素反応パラメーターに及ぼすpHの影響を調べた結果,His296とHis151はそれぞれ一般塩基触媒と一般酸触媒として作用する可能性が示唆された.また,Zn^<2+>は本酵素の活性を強く阻害することが知られていたが,非常に低濃度では,SMaseを強く活性化することが明らかになり,Zn^<2+>によるSMaseの活性調節の可能性が示唆された. 2.リン酸アナログとして知られているフッ化ベリリウム(BeF_x)はホスホジエステラーゼの酵素活性を阻害する.そこで,SMaseの酵素作用に及ぼすBeF_xの影響を調べた結果,SMaseはBeF_xによって非競合的に阻害され,その阻害にはMg^<2+>が必要であることがわかった.さらに^<19>F-NMRによってBeF_xの分子種と阻害との関係を調べた結果,阻害に関わる分子種はBeF_2であることが明らかになった. 3.SMaseによって加水分解されるスフィンゴミエリンのリン酸エステル結合の酸素原子を硫黄に置換した基質アナログはSMaseによって加水分解されることが明らかになった.この反応で得られた加水分解産物はSH基を持つ.そこで,SH基の定量を利用してSMaseの酵素活性を測定した結果,連続測定が可能な活性測定法を確立することができた.
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