研究概要 |
前年度において、温度感受性SV40T抗原遺伝子導入トランスジェニックラットから樹立した条件的不死化網膜および脳毛細血管内皮細胞株(TR-iBRB細胞およびTR-BBB細胞)をin vitroモデルとして用い、両細胞株の発現遺伝子をdifferential display法を用いて解析した。その結果、TR-BBB細胞と比較してTR-iBRB細胞に高発現する遺伝子を8遺伝子検出することができた。今年度は、TR-iBRB細胞高発現遺伝子の特性を詳細に解析することを目的とした。TR-iBRB細胞高発現遺伝子のうち、TR-BBB細胞との発現量の差が最も大きい遺伝子はマウスM-cadherinの3'末端非翻訳領域と高い相同性を示した。マウスおよびヒトM-cadherinの配列をもとにプライマーを設計し,ラットM-cadherinをクローニングした。ラットM-cadherinのアミノ酸配列はマウス,ヒトとそれぞれ97%および86%の相同性を示し、細胞外繰り返し構造および細胞外領域におけるCa^<2+>結合モチーフなどcadherinに特徴的な配列を有していることが推定された。リアルタイム定量PCRを用いた解析の結果、ラットM-cadherinのmRNA発現量比は,TR-iBRB細胞においてTR-BBB細胞の93倍であった。さらに、Western blot法を用いた解析の結果、タンパク質レベルでもM-cadherinがTR-iBRB細胞に高発現していることが示された。以上の結果から、内側血液網膜関門にはM-cadherinが高発現し、細胞接着において内側血液網膜関門は血液脳関門とは一部異なる機構を有している可能性が示された。
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