研究概要 |
大動脈伸展性評価では、収縮期と拡張期との大動脈径差から求める静的指標(distensibility(DIS)値、stiffness index(SI)値)があるが、拡張加速度などの動的指標の方が臨床的意義が大きいと思われる。そこで3Dエコーで、その指標を求めることが最終目標である。3Dの有用性評価の前に、動的指標の意義を検討するため、経食道エコーのacoustic quantification(AQ)機能で短軸方向の大動脈横断面積変化速度を求め、従来の静的指標と比較した。【対象】成人心臓手術のうち非虚血性心疾患N群10例と、虚血性心疾患1群14例の計24例。【方法】Mモードの大動脈収縮期経および拡張期径からDIS、SI値を求め、同部のAQから収縮期大動脈面積(Amax)、拡張期大動脈面積(Amin)、その微分からdA/dtmax、dA/dtminを求め、dA/dtmaxはAminで補正した(CdA/dtmax)。群間の検討はt検定を用い、年齢との相関はPearsonの検定を用いた。【結果】群間に、年齢、血行動態指標に有意差はなく、CdA/dtmaxは1群で低値(2.17vs.1.71,p=.044)、SI値は1群で高値(8.57vs.12.53,p=.043)、DIS値は有意差なし(2.25vs.1.68,p=.09)。年齢との相関では、CdA/dtmax(r=-0.766)はDIS(r=-0.773)と同等で、SI(r=0.587)より強い相関を示した。【考察】AQは心拍に伴う軸のずれに影響されるMモードよりも正確な大動脈径(面積)変化が測定でき、dA/dtmaxは、静的指標と同精度の動的指標と思われる。大動脈伸展性評価法として、まずAQはエコー検出以下の動脈硬化度を推定する動的指標として術中診断に有用であると思われる。
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