足白癬症への効果的ケアの確立のため、基礎研究として抗菌・殺菌作用が報告されている緑茶抽出液および木酢液の最適有効濃度を明らかにしたところ、木酢液において非常に低濃度での抗菌・殺菌作用が認められた。このため、フットケアに用いる臨床応用の素材として木酢液の有効性が示唆されたが、一方では緑茶による清潔ケアで難治性の白癬症が治癒したとの報告があることから、緑茶抽出液のカテキンによる抗菌・殺菌作用以外に、皮膚への浸透度や治癒促進作用についても検討していく必要があると考えた。このため、これらの溶液を用いたフットケアにおいて、足白癬による患部の皮膚状態を客観的に測定する評価方法の開発を行なった。微生物学的指標を用いた白癬菌の有無の評価では一過性のものを検出する可能性があり、診断の確定には医師の協力が不可欠であるが、木酢液や緑茶抽出液によるフットケア後の皮膚の変化を確認する評価方法としては、皮膚状態がより健康に保たれているかどうかを簡易にかつ非侵襲的に測定できる方法がよいと考える。本研究では、皮膚インピーダンス測定による評価を試みた。足白癬症の自覚症状を有する成人を対象として、患部と健常部の皮膚インピーダンスを測定したところ、測定されたインピーダンスはすべて角質層のものと考えられ、この結果より患部は白癬症により角質層のバリヤー機能が低下し、且つそれが局所的に進行していることが伺えた。白癬症の侵襲状況や皮膚の治癒過程を評価する1指標として皮膚インピーダンスが有効であることが示唆された。この指標を用いて、今後は白癬症の有訴者が簡便に用いることができる市販の木酢液を用いて、実際に入浴時等の日常生活において使用を依頼し、その効果を判定する必要がある。その際には、再発が問題とされる疾患の特性から、半年程度の追跡期間を設けることとする。
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