研究概要 |
現在,日本で病院勤務している正看護師の90%以上を女性が占めている為,患者の性への支援には困難がともなうことが予測され,問題を回避している可能性も否定できない。一方,造血細胞移植を受ける患者数は年々増加しており,患者の約半数は思春期及び青年期である。そこで本研究では,看護師が性に関して,どのような悩みを抱え模索しているのかを検討することにより,看護職の捉えた造血細胞移植を受ける患者の「性」に関する問題点を明らかにする。また,実際に支援している場合には,どのような内容について,どのような状況で提供しているのかについて分析することにより,看護チームとして「性」に関する支援のあり方について検討することを目的とした。 「性」と造血細胞移植との関連,または,看護の支援との関連についての先行研究は希少であった。その為,インタビュ内容は,まず看護支援の実態を把握できるように設定し、半構造化面接を実施した。看護師の個人背景,造血細胞移植患者の性に関して困った事例または内容,造血細胞移植患者への支援の有無とその内容,医療従事者との情報の共有,病院や病棟のシステムとして望むことを主な質問内容とした。インタビュは造血細胞移植看護に携わった経験のある看護師13名(3施設)である。 その結果,下記のようなことが明らかとなった。造血細胞移植患者の患者は,生殖への不安,退院後の性生活などについて看護師に相談していた。それらに対して看護師は,退院指導用パンフレット内に性生活についての項目をあげたり,患者への面会状況も含めてアセスメントしながら個別に対応したりしていた。必要な情報は適宜,看護記録等に記載して他のスタッフにも把握できるようにしていた。また,病院や病棟のシステムとして,産婦人科や泌尿器科との連携や、相談窓口等を望んでいた。今後は,これらの看護を可能にしている要因について分析を進める予定である。
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