研究概要 |
本研究は,平成14年度,15年度の2年間で下肢運動時の中心循環と末梢循環の相互作用を明らかにすることを目的とした.運動時における循環調節の役割は効果的に活動筋へ血流を通して酸素を配分することであり,そのためには心臓がその拍出量を必要に応じて増加しなければならないので,末梢の循環と同時に心拍出量の変化と同時に観察することは極めて重要であった.まず始めに,姿勢の違いによって血管径(B-mode法)と血流速度(超音波ドップラー法)(HP8500GP, HP Sonos1000)がどのように変化するかを明らかにするために,身体の異なる部位にある末梢血管および大動脈を対象として両パラメーターと姿勢との関係を明らかにした.測定部位は右側頸動脈,上腕動脈,大腿動脈,膝窩動脈および大動脈とし,安静時仰臥位と立位時の血管径と血流速度を測定した.その結果,血管径は頸動脈については立位時より仰臥位の方が高い値(立位;5.2±0.1mm,仰臥位;5.4±0.2mm)を示し,その差は有意(P<0.01)であった.その他の血管では姿勢による径の変化はみられなかった。このようなことから血管の形状や循環調節の役割は,各血管により異なり,部位ごとに血管における循環調節における役割を明らかにすることが急務であると考えられたため,引き続き異なる部位における血管形状の検討を行った。姿勢の違いによる最高血流速度は,上腕,大腿および膝窩動脈は立位姿勢(ba:70.9±4.4cm/s, fa:62.4±4.1cm/s, pa:38.3±1.7cm/s)の方が仰臥位姿勢(ba;82.1±5.3cm/s, fa:101.3±7.0cm/s, pa:62.4±4.1cm/s)より有意(ba : p<0.05,pa : p<0.01)に低い値と示した.また血流量は,総頸動脈血流量において仰臥位の方が椅座位に比べて低い値(P=0.05)を示した.一方,上腕動脈および膝窩動脈では仰臥位姿勢が立位姿勢より高い値を示した.
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