研究概要 |
卵白と大豆タンパク質を試料とし,様々な条件において形成するゲルについて,力学物性測定(圧縮と応力緩和測定)をおこなった。さらに,ゲルのミクロ構造を共焦点レーザー走査顕微鏡により,タンパク質の構造変化をフーリエ変換型赤外分光光度計(FT-IR)により調べた。食品タンパク質ゲルの物性におよぼすゲル構造と分子構造について明らかにする目的で研究をおこなった。 1)ゲルの力学物性測定と共焦点レーザー走査顕微鏡による構造観察 大豆タンパク質を試料として,豆腐の製造でよく使われる凝固剤(塩化マグネシュウムとグルコノデルタラクトンの2種)の影響と加熱温度の影響について研究をおこなった。その結果,ゲルの力学物性とミクロ構造はよく対応していることが示され,ゲル形成のメカニズムの解明に共焦点レーザー走査顕微鏡の有用性が示唆された。 2)フーリエ変換型赤外分光光度計(FT-IR)による構造解析 卵白と卵黄を試料として,加熱状態でのタンパク質の構造変化過程を検討した。卵白と卵黄は未加熱の状態で,アミドIのピークがそれぞれ1637cm^<-1>と1633cm^<-1>にみられた。卵白では,加熱により58℃以上の加熱で1637cm^<-1>のバンドの減少と1620cm^<-1>のバンドの増加が観察された。卵黄では58℃以上の加熱で1628cm^<-1>のバンドの減少と1620cm^<-1>のバンドの増加が観察された1620cm^<-1>のバンドはタンパク質の凝集に帰属される。さらに,応力緩和測定によりゲルの弾性率を求めた。次に,FTIRから得られる凝集のバンドの強度(1620cm^<-1>での吸収)と応力緩和測定から得られる弾性率の相関を調べた。その結果,卵白と卵黄の加熱ゲル両方において,有意水準0.001以下において相関係数が0.98以上と高い相関が得られた。
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