研究概要 |
本研究では,理科学習の根本的な出発点である学習者の常識知の発達と科学教材配列・学年配当の対応に的を絞り,日本の現状を分析し,学習者の常識知の発達に沿った科学カリキュラムのあり方について提言することを目的としている。特に,近年の認知発達理論より学習者の常識知の発達について明らかにし,そこから科学教材配列・学年配当を評価する新しい枠組みを構築し,その成果を踏まえて我が国の科学教材配列・学年配当の現状について分析すると共に,今後の理科カリキュラムの在り方について具体的で参考となる指針を提供することを目的としている。 本年度は,これまでの作業の成果に基づき,科学教材配列・学年配当に関する評価の理論的枠組みを提示し,実際に我が国の理科カリキュラムを検討し,新しいモデル案を構築することを行った。 具体的には,日米の初等理科カリキュラムの科学教材配列・学年配当を分析評価すると同時に,革新的な科学カリキュラムに関する資料を収集し,我が国の理科カリキュラムの改善へ向けた示唆を行った。例えば,理科学習開始学年に始まり,その内容のスコープやシーケンス,系統性や扱いについて日米の理科カリキュラムは世界的な文脈において両極端であることが示された。その成果は,オーストラリアで開催された幼児教育関連の国際学会で発表された。また,一部の学校で,本研究で提案された新しい理科カリキュラムモデルの一部を試験的に運用し始めている。これらの成果はまとめて,日本科学教育学会誌科学教育研究の特集号へ執筆するよう依頼を受け,現在最終的な準備を行っている。
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