研究概要 |
本年度は,これまでの研究でその有効性を明らかにした,ネットワークを用いたグループ学習支援システムを用いて,ネットワークの経路選択に関するグループ学習支援のための学習指導システムの開発と試行を行った。 従来のネットワークの経路選択の仕組みの学習における問題点には,学習内容が抽象的なため現実との格差が大きいことがある。この格差を少なくするために,本研究のグループ学習では,次の2つの群を用意し,学習者に経路選択の疑似体験をさせるとともに学習効果の向上を図ることを目的としている。 (1)データ通信群:仮想メールを送受信するグループ,学習者は,自分や他者が送信したメールの経路を画面上で観察することができる。 (2)経路選択群:ルータの働きを仮想体験するグループ,学習者は,データ通信群により発信されたメールのパケットを各種ヘッダの情報をもとに転送する。 これら2つの群は,ネットワークを介してリアルタイムに情報の送受信が行えるところに特徴がある。具体的には,データ通信群の学習者が仮想端末よりメールを送信すると,端末と接続されているルータがパケットを受信する。受信したルータを担う経路選択群の学習者は,パケットのヘッダ情報を考慮し,次のルータまたは端末にパケットを送信する。この作業を経路選択群の学習者は,パケットを受信するごとに行う。また,データ通信群の学習者は,経路選択群の学習者によって送信されて移動するパケットを観察する。 以上の2つの学習を交互に行うことにより,従来の教え込まれる学習から,自ら考える学習になる。 この学習指導システムを用いた検証授業の結果,定量的・定性的な観点において学習効果が向上している。今後は,さらなる調査を行っていく予定である。
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