研究概要 |
本研究では技能教育において重要である動作教育に注目し,技能動作の定量的な正誤判定,および誤り動作の類型化を行い,これらの情報を付加することで動作の知的符号化を実現した技能教育支援システムを開発することを目的とした. 本年度までに開発したシステムは,(1)要素動作抽出システム,(2)動作判定システム,(3)動作類型化システムで構成されている. まず撮影した技能動作の動画像から3次元動画像解析ソフトによって3次元位置データを取得し,熟練者が指定した評価項目により評価データを算出する.今回は習字動作を対象として実験を行い、筆の角度(2種類)と筆の上下部2箇所の角速度ベクトルを評価データとして算出した.ここで,動作過程での動的状態と静的状態,およびその切り替わり時点が,動作学習において重要であることに着目した要素動作を定義し,評価の基本単位とした.システムでは対象動作の要素動作を抽出し,評価データを各要素動作単位で算出した. 動作判定システムでは,品質工学手法のMTシステムを応用して動作の正誤判定を行う.熟練者のデータを正常データ群として,MTシステムの単位空間を各評価項目に対して作成する.この単位空間と学習者の評価データとのマハラノビス距離を求めて正誤判定を行う.実験では習字の師範資格を有する熟練者のデータかち単位空間を作成し,初級者のデータを要素動作ごとに正誤判定を行った。この判定結果は熟練者の定性的判定とほぼ一致した。 さらに動作類型化システムでは,誤りと判定されたデータを熟練者により習熟度で分類し,新たにMTシステムで単位空間を作成し,類似した動作を分類するシステムを開発した. 今回開発システムは,多次元評価データから単位空間を作成するので技能動作の総合的な評価の実現が可能となり,また単位空間を構成するデータの判断を熟練者が行うことで,より熟練者の定性的判断に近い評価が可能となる.
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