研究概要 |
本研究の目的は,聴覚障害児における算数アルゴリズムの正当化の質の変容とその変容への教師の働きかけを,正当化の根拠となる文脈の共有プロセスを検討することで明らかにすることである.平成16年度は次の目標(5)の課題に取り組んだ。 目標(5)正当化の根拠となる文脈の共有プロセスへの教師の働きかけの記述と分析 聾学校の算数の授業では,ある課題類の解決をアルゴリズムとして記述できることの妥当性を子どもが自らの経験や知識に基づいて明らかにする(「アルゴリズムの正当化」と呼ぶ)機会を保障すべきである。このように考える立場から,子どもによるアルゴリズムの正当化を算数授業で特定し,聾学校の授業で正当化をよりよく図るための視点を明らかにした。授業を教師と子どもの相互行為過程として捉え,子どもによるアルゴリズムの正当化を考察する。具体的には,授業における教師と子どもの相互行為過程を便宜上3つの場面に分けて考えた;第一は,期待に反する行為が顕在化する場面である。第二は,行為者間で行為の調整をする場面である。第三は,共有されたアルゴリズムが出現する場面である。考察により,次の二つの視点を明らかにした;第一に,相互行為過程における記号が果たす役割の重要性,第二に,相互行為過程における行為の調整が果たす役割の重要性である。 この成果はろう教育科学会の学会誌「ろう教育科学」に,4月中にも投稿する予定である.タイトルは「算数授業の相互行為過程にみるアルゴリズムの正当化」である。
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