研究概要 |
日本の英語学習者を対象とした,英語学習動機尺度(質問紙)が確立されていないことと,一般化された英語習熟度テストが公開されていない現状を踏まえ,それぞれについて研究開発を行った。その結果として,教育心理学の見地から学習者の実状を十分に反映させた動機づけモデルに従って尺度を完成することができた。また,項目分析を通じて項目を精選するためのデータを得ることができた。そして,動機づけや習熟度といった構成概念の測定と分析を行うにあたっては,構造方程式モデリングや項目応答理論,ニューラルネットワークによる探索的分析という行動計量学分野において洗練された手法を用いることに努め,可能な限り多面的な分析を試みた。 動機づけに関しては,「学習動機の2要因モデル」に基づき,日本の英語学習者の動機づけは「学習内容の重要性」「学習の功利性」という2軸に沿ってとらえられるものであると定義した。従来多くされてきた「内発的」「外発的」という1軸上の考え方ではなく,たとえば「学習内容の重要性」を高く見ている場合に「学習の功利性」を低く見れば「充実志向」,「学習内容の重要性」を低く見ている場合に「学習の功利性」を高く見れば「報酬志向」としてみなすものである。合計6つの志向について6項目ずつの観測変数を用意し,調査を行った。 英語習熟度の測定に関しては,日本国内で英語学習をしてきた学習者にとって最適な項目を用いるべきであるという観点から,日本国内の一般的な英語教育カリキュラムに沿って言語材料を段階別に提示している,財団法人日本英語検定協会による実用英語技能検定の過去問題から項目を精選し,50問を用いて調査を行った。 母集団として中等教育における日本人英語学習者を想定しうる1,584人の被調査者を得て,動機づけと習熟度の双方に対する尺度の開発を行い,両者の関係を明らかにした。
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