研究概要 |
本研究は,既存のパーソナルコンピュータをコンピュータネットワークで相互接続した仮想並列計算機環境において,並列計算機に適したデータ解析法・アルゴリズムを開発,実装するとともに,仮想並列計算機上であることをユーザに意識させることなく利用可能なグラフィカルインタフェースの構築を目的とする. 平成15年度においては,平成14年度に得られた知見に基づき,並列計算機上で有効な,新たな解析手法を開発,検討するとともに,インターネットと親和性の高い,並列データ解析用のグラフィカルユーザインタフェースを構築することを目的とした. 具体的な研究内容としては,平成14年度中に実装したブートストラップ法に加え,アルゴリズム中の部分計算の分割が容易であり,かつ,初期値が結果に及ぼす影響の大きいk-means法の並列化を行い,有効性を比較検討した.また,各々の代表的手法における仮想並列計算機内での挙動詳細を精査すべく,中途過程の履歴をGUIにより図示させ,アルゴリズムによる挙動の差異を確認した.その結果,代表的な探索的データ解析手法において,複数の部分計算の粒度が均一でない場合においても,MPIライブラリによる実装が安定した挙動を示すこと,PVMライブラリによる実装では,各ノードにおいて待ち時間が発生し,効率的計算という観点からは疑義が認められることなどが明らかになった. 以上から,仮想並列計算機環境は既存の手法への応用可能性が充分であり,並列実行を前提とした新手法の開発を待たずとも有用性を検証することができた.また,各並列化ライブラリ用に開発されたインタフェース環境を基本としながらも組み合わせを工夫することで,並列実行環境を整え得ることも明らかとなった.今後も,これらの成果に基づく改善を継続していきたい.なお,成果以外にも,仮想並列計算機の実装を視野に入れた応用に関する内容を原著論文および国際会議等で公開した.
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