研究概要 |
申請時の研究実施計画にもとづいて研究を行った.以下は本年度の研究実績である. 1.アーキテクチャの設計:白己反映計算を用いた耐タンパ・ソフトウェアのアーキテクチャを設計した.このアーキテクチャはメタレベルとベースレベルの2層構造で構成され,メタレベルは複数のモジュールをプラグインし,それらの並行な実行を可能とするように設計した.具体的なメタレベルの構成要素は暗号化・復号化機構,外部からの不正な操作を監視する機構そして複数のダミー機構からなる.メタレベルの動作はこれらの機構を実現したモジュール群の動作がインターリーブされたものである.さらに,インターリーブ実行に関する機構もメタレベルのモジュールとして実現し,可換となるように設計した.また,ベースレベルは秘密データを含む問題領域の記述であり,メタレベルから独立して記述され,実行時にメタレベルによって暗号化・復号化される.メタレベルは自己の一部を暗号化・復号化するとともにインタリーブ実行により自身の動作の解析を困難にする. 2.フレームワークの実装と基本的な実験:上記1で設計したアーキテクチャを実現するためのフレームワークを実装し実験を行った.フレームワークはJavaのクラスライブラリとして実現し,これを用いて小規模な電子商取引を行う耐タンパ・モバイルエージェントを実装した.モバイルエージェントのプラットフォームは既にあるJavaベースのシステムを用いた.耐タンパ・モバイルエージェントは複数の計算機上に存在する仮想店舗を巡回して商品の購入を行うため,クレジットカードの情報などを内蔵する.これらの情報は耐タンパ機構により保護される.この実験を通して得られた知見をアーキテクチャの設計にフィードバックした. 3.記述言語の設計:上記2で実装した耐タンパ・ソフトウェアのフレームワークからプログラミング言語として実現すべき機構を抽出し,言語シンタックスの設計を行った.本研究ではJavaを拡張することで記述言語を実現する方針であるため,Javaの構文との親和性を考慮したシンタックスの設計を行った. 4.安全な適応動作を可能とするモバイルエージェントのモデル:モバイルエージェントの耐タンパ動作は移動先への安全な適応動作と見なせる.そのようなモバイルエージェントの安全性に関する考察を行い,それを支援するためのソフトウェア・モデルを設計し,このモデルの提案と議論を国際会議で行った.
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