研究概要 |
例外処理の記述は,コーディング段階以前に,要求分析や仕様記述など開発工程の上流での検討が必要であるとの結論に至り,平成15年度は上流工程での例外処理フレームワークの研究を進めた. (1)信頼性保証のための組込みソフトウェアアーキテクチャの開発:一般的な組込みソフトウェアはイベント駆動型のプログラムであり,例外処理はイベントに対する応答として記述するのが自然である.そこで,イベントによる状態遷移とイベント発生時の処理を分離し,見通しをよくするソフトウェアアーキテクチャを開発し,同アーキテクチャ上での例外処理の扱いと言語的記述を整理した. (2)タスク間通信におけるエラー処理の整理:組込み用オペレーティングシステム上のアプリケーションでは,一般に複数のタスクが生成され,それらのタスクがタスク間同期機構を介して通信するが,タスク間通信機構の実装はオペレーティングシステムによって大きく異なる.本研究では,これまで組込みシステムでよく用いられてきたITRON,ならびに今後組込みシステムでの利用が期待されるLinuxの両オペレーティングシステムのタスク間通信機構を調査し,タスク間通信に関するエラーの扱いを整理するとともに,エラー処理を考慮した両オペレーティングシステム間のタスク間通信機構の一般的な移植法を開発した. (3)例外的入力に対するオペレーティングシステムの耐久性の評価:CMUの研究者らによるBallista法を用いて,Linuxなど既存オペレーティングシステムのシステムコールの例外的入力(規定外の引数の入力)に対する頑健性を評価した.引数の組み合わせによってはオペレーティングシステムがハングすることが確認され,ラッパによる補償手法を検討した.
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