研究概要 |
今年度は,研究実施計画に基づき前年度に構築したプロトタイプシステムの実験的評価とシステムの洗練化を行った.当該プロトタイプシステムは,申請者が開発を進めてきた学習システムG-REXを学習エンジンとし,それに加えてインタラクティブモジュールと制約的知識獲得エンジンから構成される.本システムにおいては,属性間関係を可視化するインタラクティブモジュールを介して事例を汎化するために必要・不必要と思われる属性をユーザが取捨選択する一方,システムはそのようなユーザとのインタラクションからユーザのもつ判断基準(制約的知識)を獲得し,その後の学習の効率化を図る.制約的知識獲得エンジンとしては,一般に公開されている決定木学習システムである,C4.5を用いた.複数の被験者を対象とした評価実験においては,ユーザによる属性の取捨選択により,単一の概念記述(仮説)を獲得するのに必要な学習時間を最大で約20%程度短縮できることを確認した.また,複数回の評価実験を通して制約的知識獲得に利用するインタラクション情報を洗練した結果,各仮説の獲得の際に行われたユーザとシステム間のインタラクション回数は学習が進むにつれ減少し,先行する仮説獲得の際に獲得したユーザのもつ制約的知識がその後の仮説獲得過程において属性の取捨選択,およびユーザの負荷軽減に有効に機能していることを確認した.また,C4.5により学習した決定木はルール形式に変換可能であることから,ユーザが自分のもつ判断基準を改めて認知できるという利点も実験的に確認した.さらに,これらのシステム開発・評価実験を通して得たユーザ・システム間インタラクションからの知識獲得に関する知見をビデオポータルシステムの個人適応へ援用した.
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