研究概要 |
平成14年度,15年度には,実物体の反射特性を双方向性反射率分布関数として詳細に計測・記録し,それらのデータをもとに仮想的な光学パターンを白色石膏上に投影する乙とで,反射特性を忠実に再現するという当初の研究目的を概ね達成した.しかし,実際に試作システムを構築すると,当初の研究計画では想定していなかった新たな問題点として,(a)実物体の反射特性を計測・再現するだけでは写実性が向上しないこと,(b)動的に変化するシーンに対応できなければ応用分野が限定されてしまうことの2点が明らかとなった. そのため,最終年度においては,これら2点の問題を解決した.まず,(a)の問題に対して,実世界の照明環境をカメラで計測・記録し,それをプロジェクタで忠実に再現する手法を明らかにした.記録した照明情報は,現実世界で3次元的に重畳表示されるため,ユーザは高い現実感を得られることを確認した.照明と反射は,互いに対となる光学情報であり,両者を記録・再現できるシステムを完成できたことの意義は大きいと考える. 一方,(b)の問題に対しては,2種類の解決法を提案した.ひとつは,パターンを投影する物体の底面にビジュアルマーカを貼付し,半透明の床面の下からカメラで追跡する方法である.この手法では,物体は接地していなければならないという制限はあるものの,高精度かつ高速にシーンの動的変化を検出することができる.もうひとつは,投影パターン中に追跡の手がかりとなる情報を埋め込む方法である.ここで,カメラの感度特性と,人間の視覚特性の違いを考慮して,カメラでは観測できるが人間には見えにくい不可視パターンとして埋め込むことにより,物体の3次元な追跡を実現した。 以上により,研究計画当切の目的は十分に達成できた.特に,シーンの動的変化への対応を実現したことから,複数ユーザによる協調型複合現実感としての応用も期待できる.
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